営業のムダな業務とは、受注の確度を上げないのに時間を奪う作業のこと。社内会議、日報の作成、同じ情報の二重入力などが代表例。
ただし「何がムダか」は、何を単位に聞くかで答えが変わる。業務名で聞けば社内会議が1位になり、慣習で聞けば対面訪問が1位になる。さらに年代によっても入れ替わる。
この記事では、外部調査と当社の独自調査を突き合わせ、削減の優先順位と、業務ごとの具体的な打ち手を整理する。あわせて、測り方と、効果が出るまでの期間の目安も示す。
ムダには2種類ある
営業のムダを語るとき、2つの軸が混ざりやすい。分けて考えると打ち手が決まる。
業務のムダ
「社内会議」「報告書の作成」のように、作業として名前が付いているもの。時間を計測でき、やめるか自動化するかの判断がしやすい。
慣習のムダ
「対面訪問」「接待」「手土産」のように、やり方として定着しているもの。時間だけでなく、取引先との関係や社内の期待が絡むため、単純にやめられない。
削減は業務のムダから入るのが定石。慣習のムダは社内外の合意が要る。
業務のムダ:社内会議と社内報告が5回連続トップ
HubSpot Japanの「日本の営業に関する意識・実態調査2021」では、営業担当者が働く時間の20.2%をムダだと回答した。金額に換算すると年間約6,650億円に相当する。
業務別の内訳は次のとおり。
| 業務 | ムダだと回答した割合 |
|---|---|
| 社内会議 | 50.3% |
| 社内報告業務 | 39.3% |
出典:HubSpot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査2021」(2021年2月8日発表/売り手1,545名・買い手309名)
同社の2024年の調査では、「社内会議」と「社内報告業務」が5回連続でトップにランクインしている。数年にわたって同じ2つが首位を占めている状態。
「会議のための会議」と「似た書類の複数入力」
同調査では、ムダの中身として「会議のための会議」「似たような書類の複数入力」が挙がっている。いずれも情報が1か所にまとまっていないことから生じる作業。
会議のための資料を作る時間、同じ顧客情報を複数の場所に入力する時間は、記録の置き場所を減らせば構造的に消える。
慣習のムダ:553人調査では「対面訪問」が1位
当社が2026年3月に営業職553人へ実施した調査では、慣習を単位に尋ねている。結果は次のとおり。
| 順位 | 慣習 | 全体 |
|---|---|---|
| 1 | 対面訪問 | 40.1% |
| 2 | 接待 | 35.8% |
| 3 | 手土産 | 26.8% |
出典:2026年度「営業スタイルに関する意識実態調査」(SALES GO株式会社)
業務軸のHubSpot調査では社内向けの作業が上位に来たのに対し、慣習軸では顧客と接する形式が上位に来る。同じ「ムダ」でも、指しているものが違う。
年代別では1位が入れ替わる
| 年代 | ムダだと感じる慣習の1位 |
|---|---|
| 20代 | 対面訪問 |
| 30代 | 対面訪問 |
| 40代 | 対面訪問 |
| 50代 | 接待(35.3%) |
出典:同調査
20〜30代は訪問や電話といった「時間を取られるコミュニケーション」をムダと捉え、50代は接待や手土産といった「慣習そのもの」を見直したいと考える傾向がうかがえる。
同じ「ムダを減らそう」という号令でも、想定している中身が世代で違う。
ムダの感じ方は世代で約2倍ずれる
「訪問や接待など“足で稼ぐ”アナログな営業スタイルを職場で求められている」と感じる割合には、大きな開きがある。
| 年代 | 求められていると感じる割合 |
|---|---|
| 20代 | 92.7% |
| 30代 | 86.9% |
| 40代 | 69.6% |
| 50代 | 43.9% |
| 全体 | 73.2% |

出典:同調査
20代の9割超が「足で稼ぐことを求められている」と自覚している一方、50代では4割台。指示を出す側と受ける側で、認識が2倍ずれている。
削減施策が空転する原因の多くは、ここにある。管理職が「もう足で稼ぐ時代ではない」と考えていても、若手は現場でそう求められていると感じている。
接待に前向きな若手の動機
意外に見える結果が1つある。接待に「積極的に参加したい」「必要なら参加する」と答えた前向き層は、20代が82.6%で全世代トップ。50代(33.8%)のおよそ2.5倍。

出典:同調査
理由も調査で拾えている。
- 20代女性:「商談をスムーズに進めるために、顧客の本音を知りたいから」
- 50代男性:「お酒が弱くなったから」「年下の取引先を接待するのはかえって申し訳ないから」
若手が接待に前向きなのは、付き合いがよいからではなく、情報を取る手段として合理的だと判断しているため。ここを取り違えて「若手は飲み会を嫌がる」という前提で制度を設計すると、実態と逆の手を打つことになる。
削減を進める5つのステップ
個々の打ち手に入る前に、全体の順序を置く。ここを飛ばすと、思いつきの施策が並んで効果が読めなくなる。
1. 業務を洗い出す
営業が関わる作業を、名前を付けて並べる。この時点では削る削らないを判断しない。担当者へのヒアリングで、記録に出てこない作業を拾うのが要点。承認待ちや資料探しは、本人に聞かないと出てこない。
2. 分類して優先順位を付ける
洗い出した作業を「時間量」と「削減の容易さ」の2軸で並べる。両方が大きいものが最初の対象。
| 削減しやすい | 削減しにくい | |
|---|---|---|
| 時間量が大きい | 最初に着手 | 中期の課題として置く |
| 時間量が小さい | 余力があれば | 手を付けない |
慣習のムダが後回しになるのは、この表で「削減しにくい」側に入るため。社内外の合意が要る。
3. 施策と期限を決める
誰が、いつまでに、何をやめるか。「やめること」を明記するのが重要。新しいやり方を足すだけだと、旧来の作業が並行して残る。
4. 一部で試す
全社展開の前に、1チームで2〜4週間試す。ここで現場の抵抗と、想定外の副作用が出る。
5. 効果を測って広げる
測定の結果が出てから展開する。効果が出なければ、対象の選び方に戻る。
なぜムダが生まれるのか
業務を1つずつ削っても、同じムダがまた生えてくる場合がある。発生源が3つある。
情報が複数の場所に分かれている
顧客情報が名刺管理、表計算ソフト、個人のメールに散らばっている状態。転記が発生するだけでなく、二次被害が出る。
- 担当者が不在だと、他の人が状況を把握できず止まる
- 同じ顧客に複数人が別々に連絡する(バッティング)
- 引き継ぎのたびに、口頭とメールで情報を渡し直す
削減の対象は転記作業に見えるが、原因は置き場所が複数あること。
営業プロセスが標準化されていない
トークの進め方、提案資料、フォローの手順が個人任せになっている状態。毎回ゼロから作るため、資料作成の時間が減らない。
新しく入った人が立ち上がるまでの期間も延びる。育成コストという形でムダが積み上がる。
定着しないツールを重ねている
乗り換えを繰り返すと、そのたびに移行と再入力が発生する。実際にあった例では、国産ツールを導入 → 1年で外資のSFAへ → 入力が面倒になり1年後にまた元のツールへ、と1年ごとに3回乗り換えている(近畿壁材様の事例)。
高機能なものを入れても、使われなければ機能は無いのと同じ。別の企業では、チャット機能は8〜9割使われていた一方、機能全体の利用率は3割程度だった(エバラ食品工業様の事例)。
ムダを決める前に、時間の使い方を測る
削減の議論が空転する原因は、たいてい現状を測っていないこと。「訪問が多すぎる」「会議が長い」といった印象で対象を決めると、実際には時間を食っていない業務に手を付けることになる。
4区分で記録する
1〜2週間、営業担当の稼働時間を次の4つに分けて記録する。
| 区分 | 含まれるもの |
|---|---|
| 商談 | 顧客との打ち合わせ・電話・メールのやり取り |
| 移動 | 訪問の往復 |
| 記録 | 日報、SFA入力、報告資料の作成 |
| 社内 | 会議、上司への報告、承認待ち |
粗い記録で構わない。30分単位で十分に傾向は出る。
判断の目安
「記録」と「社内」の合計が「商談」を上回っている場合、周辺作業が本業を圧迫している状態。この2区分から削減対象を選ぶ。
逆に「移動」が突出している場合は、訪問の組み方やオンラインとの使い分けが先。
業務別の打ち手
測った結果から、区分ごとの打ち手を決める。
社内会議
ムダの1位。削減の判断基準を1つ決めるだけで変わる。
- 確認と進捗共有だけの議題は、会議にしない。 記録を見れば分かる情報を、集まって読み上げない
- 目的と議題を事前に共有し、決めることが無い回は開かない
- 定例の頻度を落とす前に、まず所要時間を半分にする
- 出席者を絞る。報告を聞くだけの参加者は、議事録の共有で足りる
会議そのものより、準備に使う時間のほうが大きい場合もある。資料を作るために数字を集め直しているなら、削るべきは会議ではなく集計のほう。
社内報告・日報
書く内容の大半は、すでにどこかに入力されている情報の転記。
- 日報の項目を、記録済みのデータから組み立てられる形にする
- 上司が見たい数字が決まっているなら、その集計を自動化して報告自体をなくす
- 報告のための集計を人がやっている状態は、真っ先に消せる
移動と再訪問
移動は稼働時間を確実に削るが、顧客接点ではない。削減の効果が読みやすい区分。
- 訪問先をエリア単位でまとめ、1日の移動を減らす
- 初回はオンライン、要所は訪問という線引きを組織のルールとして先に決める。担当者ごとの判断に委ねると基準がばらつく
- 再訪問の発生理由を記録する。資料の不足が原因なら、持参物の標準化で減る
- 移動中にできる作業(記録の入力、次の商談の確認)を決めておく。移動そのものを減らせない場合の次善策になる
二重入力
名刺管理、SFA、表計算ソフトに同じ顧客情報が散らばっている状態。
- 顧客情報の正本を1つ決め、他はそこを参照する形にする
- 名刺のデータ化を入口にすると、入力そのものが発生しなくなる
- どこに何を入れるかを文書にする。 「いつ・誰が・何を入力するか」が決まっていないと、人によって入れる場所が変わる
資料作成
提案資料を毎回ゼロから作っている場合、ここが最も大きい単独作業になっていることがある。
- 業種別・課題別に型を用意し、差し替える箇所だけを変える
- 過去に受注した提案を、そのまま参照できる場所に置く
- 作った資料が個人のPCにしか無い状態をなくす。同じものを2人が別々に作るのが最も大きなムダ
予算ゼロで今日からできること
ツール導入や組織変更は時間がかかる。承認を待たずに始められるものから挙げる。
- メールのテンプレート化。 初回アプローチ、商談後のフォロー、検討状況の確認。よく書く3種類を用意するだけで、1通あたりの作成時間が消える
- 単語登録。 会社名、製品名、定型の言い回しを登録する。1回数秒でも、1日の入力回数を掛ければ効く
- 提案資料の型を決める。 毎回ゼロから作らず、差し替える箇所だけを変える形にする
- 会議の所要時間を先に決めて共有する。 終わりの時刻を宣言するだけで長引かなくなる
いずれも効果は小さいが、始めるための承認が要らない。測定の1〜2週間と並行して進められる。
訪問を減らすと受注は減るのか
削減で最も出る反論。答えは削る対象による。
削ってよいのは「記録と転記の時間」。削ってはいけないのは「顧客と接する時間」そのもの。訪問回数や商談数を目標として下げれば、工数は確実に下がるが、受注も比例して下がる。
一方で、移動時間は顧客接点ではない。同じ訪問件数を、移動を減らして実現できるなら削減の対象になる。オンラインへの置き換えも、接点の回数を保てるなら顧客接点の削減にはあたらない。
「訪問を減らす」と「顧客と会う回数を減らす」を分けて考えることが要点。
組織で削る:インサイドセールスとの分業
個人の努力ではなく、役割を分けることで構造的に削る方法。
| 役割 | 担当範囲 |
|---|---|
| インサイドセールス | 見込み客の育成、初回接触、商談化の見極め |
| フィールドセールス | 商談、提案、クロージング |
フィールドセールスが確度の低い相手に時間を使わなくなるため、移動と初回接触の工数がまとめて減る。
導入時の注意は、引き継ぎの基準を決めること。どの状態になったら渡すのかが曖昧だと、両者の間で案件が滞留する。
外に出して削る:分業とアウトソーシング
ツール導入以外の選択肢。予算や体制の制約で選べる幅が要る場面で使う。
出しやすいのは、判断を伴わない定型作業。
- 見積書・契約書の作成
- データ入力、経費精算
- テレアポ、リスト作成
出しにくいのは、顧客の文脈が要る作業。提案書の中身、価格の判断、関係の維持は社内に残す。ここを外に出すと、短期の工数は下がっても、社内に知見が残らなくなる。
委託先を選ぶときに見る点は3つ。自社の業界での支援実績、営業プロセスをどこまで可視化して返すか、改善提案の体制があるか。活動の記録が自社に返ってこない委託は、費用対効果を後から検証できない。
ツールで削る:カテゴリ別の地図
「ツールを入れる」と一言で言っても、担う範囲が違う。課題とカテゴリの対応は次のとおり。
| 課題 | カテゴリ | 担う範囲 |
|---|---|---|
| 顧客・案件情報が散らばっている | SFA | 営業活動の記録と可視化 |
| 顧客との関係が個人依存 | CRM | 顧客情報の一元管理 |
| 見込み客の育成に手が回らない | MA | メール配信と行動追跡の自動化 |
| 移動に時間を取られる | オンライン会議 | 訪問の置き換え |
| 日程調整の往復が多い | 日程調整ツール | 候補提示と確定の自動化 |
選ぶときに見る4点
無料デモやトライアルで確かめる観点。
- 直感的に操作できるか。 説明を読まないと使えないものは定着しない
- 入力しやすいか。 特にスマートフォンから入力できるか
- 自社の営業フローに合うか。 ツールに合わせて業務を変える範囲がどこまでか
- サポート体制があるか。 導入初期の設定と、定着期の相談先
生成AIで削れるようになったこと
ここ数年で、記録と要約の領域は大きく変わった。従来は人が書くしかなかった作業が、自動化の対象になっている。
対象になる作業
- 商談メモから日報を生成する
- 議事録を要約し、決定事項と次のアクションを抜き出す
- メールの下書きを作る
- 顧客ごとの過去のやり取りを要約して商談前に渡す
いずれも既にある情報を形を変えて出す作業で、判断を含まない。ここが自動化に向く。
前提は、記録が1か所に集まっていること
生成AIに任せるには、渡す材料が要る。営業記録が複数の場所に散らばっていれば、AIは全体を見られない。
データの集約が先、自動化が後という順序になる。この順序を逆にすると、断片的な情報から作られた不正確な日報が出てくるだけになる。
SFA(営業支援システム)の役割は、この「1か所」をつくること。顧客・案件・活動の記録を集約し、日報も集計も入力済みのデータから組み立てられる状態にする。
なお、SFAを入れても定着しない例は少なくない。原因の多くは、入力の手間が増えるだけで現場に返ってくるものがない設計にある。導入時の注意点は SFAが失敗する理由 で整理している。
現場が合意できる着手点
削減の設計で見落とされやすい観点がある。どこから手を付ければ反発が少ないか。
営業成果を出すために必要だと思うものを尋ねた結果、「無駄な作業を自動化し、商談に集中できる環境」が52.4%で1位となった。
| 年代 | 「自動化して商談に集中できる環境」を選んだ割合 |
|---|---|
| 20代 | 64.5% |
| 30代 | 51.4% |
| 40代 | 54.3% |
| 50代 | 39.6% |
| 全体 | 52.4% |

出典:同調査
注目すべきは、すべての年代で1位だった点。ムダだと感じる慣習は世代で割れるのに、「自動化して商談に集中したい」という要望だけは共通している。
つまり削減の設計は、世代で割れる「慣習」に手を付けるより、全世代が一致している「周辺作業の自動化」から入るほうが摩擦が少ない。
体制によって着手点は変わる
同じ「ムダ削減」でも、営業体制によって効く順序が違う。
| 体制 | 最初に効くもの | 理由 |
|---|---|---|
| 訪問中心・少人数 | 移動の組み方、オンラインとの線引き | 移動が稼働時間の大きな割合を占めるため |
| 訪問中心・組織的 | インサイドセールスとの分業 | 個人の工夫では限界があり、構造で削るほうが速い |
| インサイドあり | 記録の集約、引き継ぎ基準の明文化 | 分業の接続部分で情報の受け渡しが発生するため |
| 既存深耕が中心 | 報告・集計の自動化 | 訪問より社内対応の比重が高い傾向にあるため |
新規開拓が中心か既存深耕が中心かでも変わる。新規中心ならリスト作成とアプローチの工数、既存中心なら報告と社内調整の工数が先に出る。
自社がどれに当たるかは、4区分の測定で判別できる。 印象で決めない。
削減で何が得られるか
社内で施策を通すときの説明材料として、削減の効果を4つに整理する。
| 得られるもの | 中身 |
|---|---|
| 商談時間 | 記録と社内対応から回した時間が、顧客接点に向かう |
| 営業の質 | 商談前の準備に時間を割けるため、提案の精度が上がる |
| 担当者の負担 | 残業の削減と、記録作業への不満の低下 |
| 顧客満足度 | 対応の速さと、担当者不在時の引き継ぎの滑らかさ |
順序としては、商談時間が先に増え、質と満足度は後から付いてくる。効果測定を短期で打ち切ると、後半の2つを取り逃がす。
事例:情報共有が進むと何が変わるか
実際に記録を1か所へ集めた企業で、何が起きたか。
ある企業では、企画営業・商品開発・サポートの3チームで情報が分かれていた。記録を集約した結果、半年間で115件以上の商談結果を網羅し、データに基づく営業判断ができる状態になった(ヤクルト本社様の事例)。
別の企業では、旧システムのデータ抽出とクレンジングを経て移行し、データを溜める文化の定着に約3年を見込んで進めた。当初の想定どおり定着し、次の「可視化」と「分析」の段階へ移っている(エヌ・ティ・エル様の事例)。
後者が示すのは、集約は一度の作業ではなく運用の変更だということ。ツールを入れた日ではなく、記録が習慣になった日から効果が出る。
削減して失敗する3つのパターン
工数削減が裏目に出る典型を3つ挙げる。
1. 顧客接点そのものを削る
訪問回数や商談数を目標として下げる形。工数は確実に下がるが、受注も比例して下がる。削減の対象は「顧客と接する時間」ではなく「その周辺の作業」に限定する。
2. ツールを入れて入力が増える
SFAを導入したのに、これまでの日報も並行して残る状態。記録の置き場所が1つ増えただけで、現場の手間は純増する。導入とセットで、何をやめるかを決める必要がある。
3. 削減の効果を測らない
施策を打ったまま、前後で何がどれだけ変わったかを見ない形。対象の選び方が間違っていても気づけない。
現場の反発をどう扱うか
削減施策が止まる原因は、技術ではなく合意にあることが多い。よく出る反応と、その扱い方。
「今のやり方で回っている」
回っていることと、最適であることは別。測定の結果を先に見せるのが最短。「記録と社内で稼働の4割」という数字は、議論を印象論から外す。
「入力が増えるだけ」
過去にツールを入れて失敗した経験があると、必ず出る。前掲のとおり、1年ごとに3回乗り換えた例もある。ここへの回答は1つで、導入とセットで何をやめるかを示すこと。やめるものが無いなら、その施策は見送る。
「うちの営業は特殊だから」
業界や商材の固有性は実在する。ただし、社内会議・報告・二重入力といった周辺作業の構造は業種を問わず似ている。固有性があるのは顧客と接する部分で、そこは削減の対象に入れていない。
巻き込み方
施策を決める段階から現場を入れる。洗い出しのヒアリングは、そのまま合意形成の場になる。決まったものを下ろす形にすると、定着しない。
効果の測り方
削減率は次の式で出せる。
工数削減率(%)=(改善前の工数 − 改善後の工数)÷ 改善前の工数 × 100
ただし、この数字だけでは足りない。削減した時間が商談に回ったかを同時に見る。
| 指標 | 見るもの |
|---|---|
| 4区分の構成比 | 「記録」「社内」が減り、「商談」が増えたか |
| 商談件数 | 削減した時間が顧客接点に回ったか |
| 受注率 | 接点の質が落ちていないか |
工数だけが減って商談が増えていなければ、生まれた時間が別の作業に吸収されている。
削減の効果が出るまでの期間
施策によって、効果が出るまでの時間が違う。同じ物差しで測ると判断を誤る。
| 施策 | 効果が出るまでの目安 |
|---|---|
| メールのテンプレート化・単語登録 | 即日〜1週間 |
| 会議の判断基準の変更 | 2〜4週間 |
| 報告・集計の自動化 | 1〜3か月(設定と運用の定着を含む) |
| 記録の集約(SFA導入) | 数か月〜数年 |
| 慣習の見直し(訪問・接待) | 取引先との調整を含むため個別 |
記録の集約が長いのは、ツールを入れる作業ではなく運用を変える取り組みだから。前掲の事例では、データを溜める文化の定着に約3年を見込み、実際にそのとおりの期間で定着している。
短期の施策と長期の施策を同時に走らせ、短期のほうで現場の納得を得ながら長期を進めるのが現実的。長期の施策だけを立てると、途中で止まる。
まとめ
- 営業のムダは業務のムダと慣習のムダに分かれ、聞き方で1位が変わる
- 業務軸では社内会議50.3%・社内報告39.3%が上位(HubSpot Japan 2021)。5回連続でこの2つが首位
- 慣習軸では対面訪問40.1%が1位。ただし50代のみ接待が1位(当社553人調査)
- 「足で稼ぐ営業を求められている」の自覚は20代92.7%・50代43.9%と約2倍の開き
- 一方で「自動化して商談に集中できる環境」は全世代で1位(52.4%)。ここが合意できる着手点
- 削るのは記録・転記・集計。顧客と接する時間は削らない
- 生成AIで記録と要約は自動化できるが、データの集約が先、自動化が後
GoCoo! SFAなら、顧客・案件・活動の記録を1か所に集約し、日報や集計を入力済みのデータから組み立てられます。日報・集計・二重入力のうちどれが最も時間を取っているか、現在の管理方法を伺ったうえで削減できる範囲と順序をご提案します。
調査概要(当社調査)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査テーマ | 営業スタイルに関する意識実態調査 |
| 調査期間 | 2026年3月 |
| 調査対象 | 20〜50代の全国の営業職の男女553人 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 調査主体 | SALES GO株式会社 |
本調査データを引用・転載される場合は、出典:2026年度「営業スタイルに関する意識実態調査」(SALES GO株式会社)とご明記ください。調査結果の詳細は プレスリリース を参照。